わたしたちの当たり前は、お客様の当たり前ではありませんでした。

補強金具を避けて設置する「カウンター下収納」をご希望されるお客様は、次第に増えてきました。 フジイではこれまでも、お客様ごとの状況に合わせて、補強金具を避けるための設計や加工を行ってきました。一件ずつ向き合ってきたからこそ、対応そのものには自信がありました。また、これまで個別に対応を重ねてきた経験から、補強金具にはいくつかの共通したパターンがあることも見えてきました。 「わかりやすく整理することで、もっと相談しやすい形でご案内できるかもしれない」。そう考えたわたしたちは、これまでの対応を標準化することを決めました。しかし、そこで思いがけない壁にぶつかりました。それは、「お客様に必要な情報をお伝えする」ことの難しさでした。
設計に必要な情報が、集まらない理由
補強金具のあるカウンター下収納は、一般的なサイズオーダーよりも確認事項が増えます。
金具の形状。
金具の奥行。
壁からの位置。
左右の壁の有無。
設計担当にとっては、どれも欠かせない情報です。
これまでは、ご依頼をいただくにあたってお客様から情報をいただいたあと、追加で確認をお願いすることが、少なくありませんでした。
そこで「金具クリア加工」という製品シリーズをつくるにあたって、わたしたちは、金具を避けて製作するために必要な情報を、あらかじめお客様に記入していただける資料が必要と考えました。
「これ、お客様には伝わらんのちゃう?」
フジイでは月2回、設計担当と営業担当が集まる開発会議を行っています。
ある日の開発会議でのことです。
その日、設計担当が会議で提出したのは、設計に必要な寸法を漏れなく確認できるよう、一つひとつ整理した資料。その資料を目にしていた営業担当が、少し言いにくそうに「この資料、お客様には伝わらんのちゃうかなあ」と口にしました。
「俺がもし買う立場だったら、難しい言葉ばっかりの資料で、嫌になるもん」。
その言葉に、会議に出席した全員が「あっ」と気づきました。
「わたしたちは日々、家具づくりをしている中で、知らず知らずのうちに社内でしか伝わらない言葉を使っていたんだ」。
お客様と日々接する営業担当は、「家具づくりに関わっていない人にとっては、専門用語はなじみがない」こと、「その言葉で書かれた資料を渡されても、どこを測ればいいのかわからない」ことをこれまで、お客様とのやりとりで気づいたといいます。
ですが現場では、専門用語の難しさを実感する機会がありませんでした。本来であればもっと早く知っておくべきだったのですが、わたしたちは資料づくりをする中で、お客様の視点に今更ながら気づいたのです。

実は、わかりやすく話しているつもりでした。
もちろんわたしたちも、お客様に伝わるように丁寧にお伝えしているつもりでした。でも実際には、わたしたちだけがわかる“業界用語”で話していたのかもしれません。
わたしたちには当たり前の言葉でも、お客様にとっては初めて聞く言葉ばかりです。なかなか情報を収集できない理由は、わたしたちにあったのです。
そこでわたしたちは、まず難しい言葉を使っていないか、資料を見直すことにしました。初めてお問い合わせいただいたお客様でも、“金具を避ける”仕様である「金具クリア加工」をご注文できるように。
専門用語はできるだけ使わず、細かく説明を加えるとともに、写真やイラストで測っていただく位置を明確にしました。
さらに、「金具クリア加工」のお見積りや設計図をスムーズにご提案するために、これまで対応してきた事例を一つひとつ見直してみることにしました。
メーカーごとに形状が違う補強金具ですが、大きく分けるといくつかのパターンに整理できることがわかりました。もちろん、すべてが同じではありませんが、共通する特徴を見つけることで、お客様にもわかりやすくご案内できる可能性が見えてきたのです。
「伝わること」と「整理すること」。この二つがそろったことで、私たちはこれまで積み重ねてきたノウハウを、ひとつの形にできると確信しました。
次回予告
補強金具にパターンがあることがわかりました。次回は、フジイが整理した3つの標準仕様と、それを基にした「金具クリア加工」という製品についてご紹介します。








