Smart Factory

facebook Instagram

「すきまくん」ができるまで

フジイのものづくりを語るうえで欠かせない商品が「すきまくん」です。 この商品を立ち上げたのは、現在の会長・藤井哲郎。社長時代に、暮らしの中の小さな課題に向き合いながら、その考え方を形にしてきました。今回はフジイの広報担当が、会長に「すきまくん」ができるまでの背景を聞きました。

Q1まず、フジイという会社の特徴は、
どこだと考えていますか。

会長 やっぱり、「一気通貫」やと思います。世の中には、売ることだけに特化している会社もあるし、企画だけやる会社もあるし、製造を外に出している会社も多いんです。オーダーメイドと言いながら、実際には別のところでつくっているケースも少なくない。最初から最後まで、きちっとつながっている会社は意外と少ないんですよ。でも、うちは、企画・開発・設計・製造まで、自分たちでつないできた。そこが、フジイの土台やと思っています。  

フジイでいえば「お客さまの要望を聞く」→「図面化する」→「製造する」→「現場に設置する」、最初から最後まで全て自社で行っている、それが「一気通貫」です。この特徴がなかなか伝わらん時期はありました。最近は、この「一気通貫」のものづくりに価値を見いだしてくださるお客さまが増えてきた。言葉としてだけやなくて、ようやく実感として届いてきたんやと思います。

 

Q2 会長が生み出した「すきまくん」は
どんな発想から生まれたのでしょうか。

会長 もともと、うちの商品は、いわゆる大きな企業さんのような「作って、広く、大量に売る」商品とは、ちょっと違うな。という感覚がずっとあったんです。
戦略を立てて、ものを作って、広い市場に出していく。そういうやり方はもちろんひとつの正解なんやけれど、うちはそれとは違う。暮らしに合わせて、オーダーメイドやセミオーダーの商品をつくっていく。そういう、いわばマーケットインの発想は、もうずっと昔から持っていました。  

ただ、考え方があるだけでは、ものにはならないんですよね。オーダーメイドで、こういうオリジナル商品をつくっていこうと思ったら、どういう条件が必要か、どういう体制がいるか、そういうことを埋めていかんとあかん。それは最初から全部わかっていたわけではないんです。だからこそ、ひとつひとつ勉強しながら、形にしていったんです。

 

Q3「すきまくん」を作るまでには、
準備期間もあったのでしょうか。

会長 昔は、設計図面なんか一切ないような時代でしたから。職人さんの頭の中に全部入っていて、それでものをつくる世界です。けれど、そこから時代が進むにつれて、部品図や設計図があって、企業としてものをつくっていく考え方が、家具の業界にも入ってきた。だから、まずきちんとしたやり方を学ばんと、と思いました。そして、大手さんの下請け仕事をさせていただきながら、図面の書き方はもちろん、企業としてのものづくりの考え方を、現場で勉強していったんです。

もちろん、すぐに大きな利益になるような仕事ばかりではなかったです。でも、その時期にずいぶん勉強させてもらった。吸収できたことは多かったですね。多少持ち出しがあっても、それは勉強の期間やと思っていました。あとから振り返ると、その時間の中で吸収したことがたくさんあったからこそ「すきまくん」ができたとも言えます。

振り返ってみたら、全部つながっているんですよ。50年といえば長いようやけど、実際には10年、10年と積み重なってきた感覚です。急に生まれた商品ではないし、急に評価されたわけでもない。その前にある時間も含めて、全部ストーリーやと思っています。  



Q4「すきまくん」という名前は、
どのようにして生まれたのですか。

会長 あれは、学問的にいうと「擬人化」なんです。日本語の「隙間」に「くん」をつける。そうすることで、ただの説明ではなくなるんですよね。日本語を人物に置き換えることによって、よりお客さまのイメージが湧きやすくなる。実は、「すきまくん」という名前は妻がつけた名前なのですが、ちょうどあの時期は、親しみのある名前やキャラクターが自然に受け入れられていく時代でもあったんです。たとえば、ゆるキャラの「ひこにゃん」も同じ時期に誕生しています。そういう空気と、こちらが考えていたことが重なったんです。

私は「発想するって、そんなに難しいことやないですよ」とよく言うんです。ひとつひとつの現象いうのは、時代とそれがちょうどマッチしているから起きる。大事なんは、そこを読むことなんですよ。その感覚は大事にしていましたね。



Q5会長はよく、“時代を見る”という話をされます。
「すきまくん」にも、それは関係していたのでしょうか。

会長 もちろん関係しています。時代を見ようと思ったら、やっぱり一番マスの部分を見ないとあかんと思うんです。それが時代を引っ張っていっているから。全部が全部、そのまま正しいとは言えへんけれど、大きな流れを見て、自分たちなりに考える。その作業は、ずっと必要やと思っています。

今やったら、やっぱり20代30代の人たちに向けて考えていかんとあかん。私らの世代がお金を持っているとしても、もうそんなに物を買うかといえば、そうでもない。これからの企業は現役世代にちゃんと軸足を置かないと生き残れないと思うんですよ。大きな企業さんの真似はできなくても、お客さまの生の声を聞いて、自分とこ流に考える。そういうことは、昔も今も変わらんのです。

それに、ものやデザインいうのは、時代より進みすぎてはいけないとも思います。熟成する時間がいるんです。開発から20年ぐらいして、今「すきまくん」というポジショニングが、消費者の人にもやっと受け入れられるようになった。これは、こちらだけが頑張ればええという話やない。生活水準や住環境が変わって、暮らしのレベルが変わって、はじめて届くものもあるんです。

 

Q6会長にとって「すきまくん」は
どんな存在ですか。

会長 私にとって、「すきまくん」は単なる商品ではないですね。

企業である限り、何をつくるにしても採算が合わんと続かない。考えるのは、夢も希望もあって楽しいんやけれど、それを企業の損益に落とし込んで、仕組みづくりをしていかんと、理論だけで終わってしまうんです。そういう商品は長続きしません。
そういう意味では、「すきまくん」は、フジイがずっと考えてきたことの結晶みたいな商品やと思います。

たくさん作って売るのではなく、暮らしの中の「困った」に向き合って、どう形にするかを考えること。
お客さまの要望を聞き、それに対してプロとしてよりよい提案をして、より満足度の高い商品を提供すること。そうやって、お客さまの満足度を高めることが大事です。
長い時間をかけて、ようやくここまで来た。会社の考え方が、一番よう表れている商品。それが「すきまくん」だと思っています。


藤井哲郎(ふじい・てつろう)/株式会社フジイ・会長

社長時代に、フジイの代表的な商品「すきまくん」を立ち上げ、育ててきた人物。オーダーやセミオーダーの発想を軸に、企画・開発・設計・製造をつなぐものづくりを進めてきた。現在は会長として、フジイのこれまでとこれからを見つめている。

後編に続きます →

一覧へ戻る

Copyright Smart Factory. All Rights Reserved.
TOPへ